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ユマニチュードとはどんなケア技法?認知症ケアの新たな手法

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認知症の心をつかむケア技法「ユマニチュード」

高齢化が進む中で「もし親に介護が必要になったらどうしよう?」と不安に感じている方も多いでしょう。親の介護をするのは大変です。人によっては介護を理由に退職して経済的に困窮する方、介護疲れから心身に支障が生じる方もいます。

私は元々メニエール病を持っていたのですが、親の介護時期に再発してしまいました。ただの介護でさえ負担が掛かりますが、さらに大変になるのは認知症時の介護です。

認知症が悪化すると介護者に対して暴言を吐く、あるいは暴力をふるうといったことも珍しくありません。発症してまもない初期の段階であれば介護負担は軽いですが、重度化するにつれて介護がきついものになります。

そんな中、画期的な認知症のケア手法として「ユマニチュード」に注目が集まるようになりました。NHKのクローズアップ現代ハートネットでも取り上げられ、認知症有症者の症状を和らげる力があるとして、介護施設でも実践されるようになっています。

今回はこのユマニチュードに注目し、その内容や実践方法について解説します。介護施設で働く介護のプロだけでなく家族介護者でも実践できる技法なので、高齢の親を持つ方は基本的なエッセンスを学んでおくことをオススメします。

 

ユマニチュードとは?認知症の方と「人として」向き合う

ユマニチュードとはフランスで開発されたケア技法です。体育の先生をしていた「イブ・ジネスト」氏と「ロゼット・マレスコッティ」氏が1979年頃に体系化したと言われています。

その後、この二人が中心になって世界的に普及活動が行われ、日本には2014年頃から本格的に導入されるようになりました。それでは、ユマニチュードのケアとはいったいどのようなものなのか?まずは基本的な考え方から紹介します。

ケアの「考え方」としてのユマニチュード

ユマニチュードでは、「人間とはそもそもどのような存在なのか」、「介護とは本来どうあるべきか」というケアに対する根本的な「考え方」を重視しています。そのため、「哲学」や「思想」と呼ばれることも多いです。

認知症を発症した被介護者は、「症状が進むと介護者から受ける介護を拒否する」、「暴力的な態度を介護者に対して取る」と言った症状が現れることがあります。そうなると、介護者の側もそれに合わせて被介護者に怒りやイライラをぶつけてしまう・・・ということが多くなるかもしれません。

介護者がそのような態度をとると、「被介護者の側もさらに暴言・暴力の頻度を増し、介護負担はどんどん上がる」という負のスパイラルに陥る可能性があります。

ユマニチュードのケアでは、「認知症を発症している方を人間として尊重すること」が重視されます。介護者には、介護を受ける人に対して「あなたを大事にします」、「あなたの存在を認めます」という「メッセージ」を伝え続けるのです。こうした態度をとり続けることで、被介護者の側も態度を和らげ、ケアを行いやすくなります。

「4つの柱」がケアにおけるポイント!

さらに具体的にみていきましょう。ユマニチュードでは、ケアを行う上でポイントになることとして、「見る」・「話す」・「触れる」・「立つ」という「4つの柱」を規定しています。

「見る」

ケアを受ける方と目線の高さを合わせ、本人に顔を近づけて、正面に向かい合いながら介護をすることが原則です。目線を同じにすることで介護をする側、受ける側が平等であることを示し、正面から向き合うことにより、相手に対して「信頼・親密・愛情」を伝えることにつながります。

「話す」

被介護者に話をするときは、ネガティブなことを決して言わないことがポイントです。どんな時も、優しく話すよう心がけることが重視されます。

「触れる」

被介護者の体に障るときは相手に安心感を与えるように、手のひら全体を用いて、なでるように触れることがポイントです。力任せに体を動かすようなことは行わない、手首などを強くつかむようなことはしないようにするのです。

「立つ」

「立っている状態(介護を受けている方)」の時間をできるだけ作ってもらうようにするということ。二足で歩くことは人間としての尊厳の保持につながり、骨や筋力の低下を防ぎ、心肺機能を高めることにもつながります。
ユマニチュードのケアでは、「立つ」という時間を一日20分(合計)は必要と規定。1回当たり数分でも、何回か繰り返して20分を確保します。

ユマニチュードの4つの柱

  • 1見る・・・目線の高さを合わせる。顔を近づけて、正面から向かい合いながら介護する。
  • 2話す・・・ネガティブな言葉は言わない。
  • 3触れる・・・安心感を与えるように手のひら全部を使って触れる。
  • 4立つ・・・人間としての尊厳の維持・骨・筋肉・心肺機能を維持するため、立つ時間を作る

ユマニチュードの有効性とは?認知症の症状の改善につながる!

ユマニチュードで改善

認知症は症状が悪化するとさまざまな症状が出るようになり、介護者の負担増が避けられません。実際、介護者による虐待や介護負担に耐え切れなくなって心中する事件は、被介護者が認知症だったというケースが多いのです。

しかしそんな中、ユマニチュードのケア技法を導入している介護施設からは、認知症の方の症状が改善しているという報告が数多くあります。認知症の症状をやわらげて、介護者の介護負担減少につながるとして、日本でも全国的に注目が集まっています。

認知症介護は大変・・・BPSDになると特に介護負担は上昇

 

認知症には原因疾患ごとに「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」などタイプ分けされています。発症する症状としては、大きく分けて「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」とがあります。

中核症状

「中核症状」は、もの忘れに代表される記憶障害や時間・場所が分からなくなる見当識障害、順序立てて物事を行えなくなる実行機能障害などです。認知症を発症すると、ほとんどの人に見られる症状です。この中核症状自体は、介護負担はそれほど大きくありません。

「BPSD(行動・心理症状)」

一方、「BPSD(行動・心理症状)」は認知症発症者の社会的な関係(家族・介護者との関係など)や生活環境、本人の性格上の特徴などが影響して現れる症状です。暴言や暴力、もの盗られ妄想、失禁、弄便(便を手で持つなど)など、人によって症状が異なります。このBPSDになると、介護者は常に被介護者を見守り続けねばならず、大きな負担となるのです。

ユマニチュードを実践することで症状は改善!介護施設での成功事例も多数

BPSDが出ている認知症の有症者は、介護施設にも多く入居していますが、ユマニチュードの介護技法を実践することで、症状が収まったというケースが多く報告されています。

例えば京都にある特別養護老人ホームでは、ユマニチュードを実践することにより、認知症の入居者に顕著に見られた「介護拒否」や「帰宅願望」、「自分の気持ちを抑えきれない」といった症状が軽減されたとのこと。「自分の居場所はここなんだ」と理解し、他の入居者とも仲良く成果うできるようになったといいます。

他にも、NHKの「クローズアップ現代」(2014年2月5日放送)では、「声を荒げる」ことが多かった入院患者に、ユマニチュードを実践した病院のケースが紹介されました。

ケアを続ける中で心が穏やかになり、「ピースサイン」をするまで気持ちが前向きになったと言います。最近はユマニチュードの介護技法を研修として取り入れている施設もあり、日本でも普及が進んでいるケア技法と言えるでしょう。

ユマニチュードを実践する上での5つのステップ

 

続いて、より具体的なユマニチュードの実践技法について紹介します。先ほど「4つの柱」である「見る」、「話す」、「触れる」、「立つ」を紹介しました。これを実際の介護の場で行う方法があります。

「5つのステップ」が定められているので、順番に解説していきます。決して難しいことではないので、在宅介護の場で誰でも行うことができます。特に認知症の肉親を介護している方は要チェックです。

ユマニチュードはケアまでの準備が大事

ユマニチュード実践の最初のステップは「出会いを準備すること」。ケアを始めることを相手にきちんと伝えることから始めます。そのため、被介護者が自室にいるときは、いきなり部屋の中に入るのではなく、ドアをノックして自分が来たことを相手に伝達します。

具体的には最初に3度ノックして反応を待ち、無反応ならさらに3回ノックします。それでも反応が無ければ、1回ノックして「お邪魔します」と言って部屋に入るのです。

2つめのステップが「ケアを準備すること」。いきなりケアを始めるのではなく、「あなたに会いたくてきました」という想いを言葉で、あるいは体の態度(見る、触れる)で示します。

ケアを行った後は再会の約束をして別れる

実際にケアを行う上でのポイントである第3のステップは、「知覚を連結すること」です。ここでいう知覚とは、「4つの柱」に含まれる「見る」、「触る」、「話す」のことです。

これらを同時に、並行的に行いながらケアすることで、被介護者が心地よくケアを受けられるようにします。ケアの中で「立つ」を効果的に取り入れることも重要です(寝たきりの方など難しいことも)。

そしてケアを行った後に、被介護者に「介護を受けられてよかった」、「気持ちよかった」という良い感情・印象を残してもらうようにすることが重要です。これが第4のステップである「感情を固定すること」です。そうすることで、次回介護を始めるとき、被介護者にスムーズに受け入れてもらえるようになります。

最後の5番目のステップは「再会を約束すること」です。部屋を出るときに「また来きますね」と優しい言葉をかけることで、ポジティブな印象が被介護者に残ります。

ユマニチュード実践:5つのステップ

  • 1出会いの準備をすること(いきなり被介護者の部屋に入室しない)
  • 2ケアの準備をすること(「会いたくて来た」という想いを伝える)
  • 3知覚を連結すること(見る、触れる、話すを並行的に)
  • 4感情を固定すること(良い印象を与える)
  • 5再開の約束をすること(再び来ることを優しく伝える)

ユマニチュードは被介護者の心を大切にする介護技法

認知症になると物忘れがひどくなり「BPSD(行動・心理症状)」が出るようになると、暴言や暴力などをするようにもなります。しかしそれに対して、介護者の側も同じような行為をしても状況はまったく改善されません。

被介護者の心に寄り添う介護を行えば態度は軟化され、コミュニケーションもスムーズに取りやすくなるはずです。もし高齢の肉親が認知症になったとき、あるいは既に介護をしているという方は、ユマニチュードの考え方や手法を覚えておくことをオススメします。