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火葬場不足で葬儀が遅れる?「火葬待ち」が普通に起こる最新の火葬場事情

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首都圏の「火葬場不足」

火葬場不足が深刻になってきている近年、首都圏を中心とする大都市で火葬場を作る動きが強まりつつあります。高齢化が急速に進む中、毎年亡くなる人が増えていくとみられ、現状のままでは火葬場が足りなくなる自治体が少なくないのです。

火葬場が不足する中、新たな「遺体安置所のビジネス」も生まれています。火葬件数が多い都市部では、亡くなった後にすぐに火葬ができず、「火葬待ち」という事態が起こっているのが現状です。例えば、私が住んでいる横浜市は市営火葬場が4カ所なので、火葬できるまで平均で4日待たないといけません。

こういった背景もあり、火葬場を使える順番が回ってくるまでの期間、遺体を預かってくれる事業者が登場しました。もちろん遺体を預かってもらうには別途費用がかかるので、「葬儀代」以外で費用が発生してしまいます。

今回は、この日本における火葬場不足の事情を取り上げ、現在火葬場はどのくらいあるのか?なぜ火葬場の増設が進まないのかなどを紹介します。(執筆者:TORU

 

なぜ火葬場が不足する?原因の一つが年間死亡数の急速な増加

私の母が亡くなったときも「火葬場が混んでいる」状況でした。「火葬場が足りないのでお葬式が遅れる」という社会的な事態は、飢饉や疫病が流行したときを除いては、日本史上においてほとんどみられなかった現象です。

しかし、今では「火葬待ち」が普通に起こっており、珍しいことではありません。なぜ火葬場はこれほど不足するようになったのでしょうか。その原因を紐解いていきましょう。

年々増え続けている日本人の死亡者数

厚生労働省が毎年発表している「人口動態統計」によれば、年間に亡くなる人の数は1970年代まで70万人台ほどでした。ところが、高齢化が進み始めた80年代頃から死亡者数はどんどん増え始め、2003年には年間100万人を超え、2017年時点では134万4,000人にまで達しています。

日本人の死亡者数の推移は以下をご覧ください。年間数千~数万人単位で増えているという状況が続いており、葬儀時(日本)の習慣である「火葬」の件数も当然ながら増えています。

1980年 722,801人
1990年 820,305人
2000年 961,653人
2010年 1,197,012人
2017年 1,344,000人

亡くなる人の数は2040年ごろまで増加し続ける

国立社会保障・人口問題研究所の試算によれば、日本人の死亡者数は今後も増加。2020年までに年間死亡者数は140万人以上となり、2024年には150万人を突破するとみられ、2040年には167万人近くまで増えると見込まれています。

その後は日本人の人口減少の影響により少しずつ減っていくと予想されますが、少なくとも2040年までの約20年間は、死亡者数は右肩上がりで増加するわけです。現状で「火葬場が足りない」という事態に直面している都市部の自治体は、今後に備えて早急の対策が必要となります。

火葬場の数は逆に減少!統廃合が進む中、住民の反対で新設が進まず

年間死亡者数がこれだけ増えているわけですから、本来なら火葬場もそれに合わせて増やしていく必要性があるのですが、現状はまったくその通りにはいっていません。

それどころか、火葬場は現在減少しつつさえあるのです。なぜこのような事態が起こっているのでしょうか?その要因としてあるのが、「火葬場の統廃合・火葬場の新設に対する住民の反対」です。

市町村合併などにともない、火葬場が減少

実は火葬場の数は年々減少しています。厚生労働省のデータによれば1996年度における全国の火葬場数は8,481箇所でしたが、2016年度時点では4,181施設。20年間で半数以下にまで減っているのです。

その要因の一つが、2000年以降全国で進められた市区町村合併です。自治体の統廃合が進む中で行政業務の合理化が進められ、火葬場の閉鎖も進めらました。2000年代初頭は年間死亡者数が100万人を超えていなかったこともあり、10~20年後に火葬場不足がするとの予想は、深刻に考えられなかったのかもしれません。

住民の反対もあって新設は進まず

2010年代以降、都市部を中心に火葬場の不足感が強まり、自治体で新設が計画されるようになってきました。しかし、住民の反対により火葬場の建設予定地の設定ができず、思うように進まない事態が各地で起こりました。

その一例が川越市。2011年に火葬場を新設するための候補地を定めましたが、近隣に住む住民が猛反対。火葬場が出来ると風評により地価が下がり、地域のイメージが下がるといった事態も起こりかねないため、住民としては許容できないのです。

さらに厚木市や奈良市など、各地の自治体で同様の「火葬場建設」問題が起こっています。火葬習慣のある日本人にとって火葬場は欠かせませんが、「住まいの近くに合ったら困るもの」という矛盾した性格を持つ施設です。そんな火葬場特有の性質が新設を妨げ、火葬場が足りないという事態を招いてしまっています。

火葬場不足を解消するにはどうすれば?火葬時間の変更、火葬場のイメージ転換、そして住民への「アメ」が重要!?

火葬場が不足していても亡くなる人は日々発生するので、火葬をしていかなくてはなりません。自治体としても住民とうまく対話をしながら、なんとかして不足分を補うべく火葬場新設に向けた努力をしていく必要があります。

そんな中、火葬場不足に対応している自治体も多いです。その取り組みの一部を以下で紹介しましょう。

火葬時間を早めるという対応

日本人の慣例として、「亡くなった後は通夜 ⇒ お葬式(告別式) ⇒ 葬儀場から火葬場に場所を移して火葬」をします。各葬儀会社でも、こうした流れで葬儀計画を利用者に提案していくのが通例です。

ただ、この慣習でいくと「お葬式を午前中に行って、火葬はお昼ごろ」という形になります。都市部では、お葬式を行う世帯は一日に多数発生するのが一般的です。参列しやすい土日に合わせて行うことも多いため、「土日のお昼ごろ」はどうしても火葬場の使用が集中し、予約が取りにくい状況が起こります。

そのため、一部の自治体では火葬時間枠を広げ、多様な時間帯にも対応できるようにしています。例えば東京都町田市の南多摩斎場は、朝9時~10時台という時間帯から火葬できるようにし、1日に火葬できる数を増やしました。職員数も増やして、対応力を高めています。

ただ、9時台に火葬するとなると、通常のお葬式プランでは難しくなります。葬儀会社や葬儀を執り行う遺族には、それまでのお葬式に対する考え方を変え、新しい形でのプランを求められます。

友引の日にもお葬式を実施

日本人がお葬式を行う場合、「友引の日は避ける」のが一般的です。友引の日に行うと「亡くなった人が友人を連れて行く」として、葬儀日として相応しくないとされています。

しかし、もともと「友引」は「相引きで勝負なしという日」(広辞苑第5版より)という意味で、友人とは関係ありません。陰陽道では「友人に災いが起こる方向」を表すので、混同されて考えられるようになり、「葬儀をすべきではない日」となったのです。

こうした慣習に合わせ、友引の日は休炉する火葬場が多いです。しかし川崎市は、火葬場の稼働力を挙げるため、2016年度から一部の施設で試験的に友引の日も開業を開始しました。

他の日に比べると利用者は少ないものの、使用する人は一定数いる状況が続いています。慣習に縛られずに葬儀を行うということも、今後必要なのかもしれません。

火葬場建設に対して住民とうまく協議する

火葬場建設に対しては住民の反対が多いですが、一部の自治体ではうまく住民側と折り合いをつけ、建設にこぎつけています。

例えば厚木市では、火葬場を建設する代わりに「周辺道路の幅を拡張する工事を実施」。さらに古くなっていた集会施設を新設するなど、いわば住民側に「アメ」を提供したのです。それにより、それまで火葬場建設に反対していた住民も、建設を認める気持ちに変わっていったと言います。

さらに広島市では、火葬場建設の候補地を行政側が一方的に決めるのではなく、「公募」によって決めるという斬新な方法を取っています。募集の際、「候補地周辺に公園を整備する」という条件も付けたところ、計9地区から応募があって建設計画が無事にまとまりました。

建設にあたっては「どんな火葬場にすべきか?」、住民側の意見も積極的に取り入れるという方針もあり、「炉を個室形式にする」など、住民の要望を踏まえた施設が作られました。このケースも、トラブルがうまく解消された例であると言えるでしょう。

火葬場不足の問題は国民一人ひとりの問題でもある

火葬場不足の問題

人は誰しも最期の時を迎えます。特に高齢の親・親族を持つ人は、自分が住んでいる自治体の火葬場事情はどうなのか、一度チェックしておくとよいでしょう。私も両親を見送ったとき「火葬待ち」となり、こんなに火葬場不足が起きているとは知りませんでした。

高齢化は今後さらに進むので、特に「東京都区部および政令指定都市となっている大都市圏の自治体」には、火葬場問題を真摯に捉え、成功例をモデルに早めに対策を取ってもらいたいものです。